「プラズモニック色素増感太陽電池」
色素増感太陽電池 (dye-sensitized solar cell, DSSC) は数ある太陽電池の中でも簡単に作製できる太陽電池である。DSSCは導電ガラス上の色素を担持した多孔質の酸化チタン膜、電解液と白金対極から構成されている。
色素増感太陽電池では色素が入射光を吸収し、光励起された色素は酸化チタンの伝導帯に電子を注入する。その後、電子は外部回路、白金対極、電解液を通り、色素に戻る。
本研究室では、さまざまな有機修飾物を持つ銀・金ナノ粒子を用いて、色素の光吸収を増感することに成功した。1,4 さらに、銀ナノ粒子(silver nanoparticle, AgNP) を用いてDSSCのエネルギー変換効率 (η) を増感することに成功した。2,5,6
しかし、金属ナノ粒子 (metal nanoparticle, MeNP) は逆電流も増加させることが判明した。局在表面プラズモン、及びMeNPを介した逆電流はナノ粒子表面からの距離とともに弱くなるため、効率向上を考えるうえで修飾物の長さが重要となる。
そこで、修飾物としてアルカンチオールとペプチド核酸 (peptide nucleic acid, PNA) を用いることによりMeNP距離の最適化を行った。5
References:
1. M. Ihara, K. Tanaka, K. Sakaki, I. Honma, and K. Yamada, J. Phys. Chem. B, 101 (26), 5153-5157 (1997).
2. M. Ihara, M. Kanno, and S. Inoue, Phys. E, 42 (10), 2867-2871 (2010).
3. H. Shibuya, S. Inoue, and M. Ihara, ECS Trans., 16 (50), 93-105 (2009).
4. M. Enomoto, K. Taniguchi, and M. Ihara, ECS Trans., 25 (42), 37-48 (2010).
5. N. Loew, S. Ikenouchi, and M. Ihara, ECS Trans., 33 (17), 139-150 (2011).
6. N. Loew, S. Ikenouchi, and M. Ihara, ECS Trans., 41 (6), 211-221 (2011).
「色素増感型太陽電池の高効率化」
低コストな湿式法で作製できる色素増感型太陽電池は、ルテニウム色素を担持したチタニア膜の吸収係数が低く、これが効率を10%程度にとどめている原因の一つとなっている。これまでに銀のナノ粒子による局所電場増強効果に注目してこのルテニウム色素の吸収係数を149倍にまで増大させることに成功している。今後、局所電場増強効果などを使って色素増感型太陽電池の高効率化をめざす。また、複素インピーダンス法による色素増感型太陽電池における各電荷移動を評価する手法を検討し、高効率化の指針とする。