気候変動を抑制しつつ経済を発展させることができる持続可能なエネルギー社会の構築は、早急に取り組まなければならない世界規模の課題です。ここ数年で、急速に再生可能エネルギーのコスト低減が実現し、 ESG投資(Environment Social Governance)の観点は,既に産業に大きな影響を与え始めています。また、化学的蓄エネルギーとして機能する水素エネルギーを、適切なエネルギーキャリアにして世界規模で融通する「グローバル水素」、国内の再生可能エネルギーなどから生成し、ローカルに活用する「ローカル水素」は、将来の持続可能な新しいエネルギー社会構築には不可欠な技術として認知されるようになってきました。これから、2030年そして2050年のカーボンニュートラルに向けて、エネルギー技術の進展によって社会が変わっていく、いわばエネルギー研究開発駆動型の社会変革期を迎えることでしょう。
人類の経済活動において、様々なところにエネルギー変換が使われています。化石燃料の持つ化学エネルギーを電気に変える火力発電、水の持つ位置エネルギーを電気に変える水力発電、 ガソリンの持つ化学エネルギーを運動エネルギーに変えるエンジン、電気エネルギーを運動エネルギーに変えるモーター、電気エネルギーを光に変える照明…など、 人類は様々なエネルギー変換を利用することで発展してきました。 今、カーボンニュートラルに向けて、エネルギー変換技術の開発加速が求められています。
一方で、密度汎関数理論(Density Functional Theory: DFT)による量子化学計算は、スーパーコンピューターの性能向上などによってモデルの高度化が可能となり、より高速で計算できる計算化学的手法やエネルギーデータのデータ科学的処理の多くは、CPUサーバーやGPUサーバーのエッジコンピューターでも処理できるレベルにまで向上してきました。また、様々なクラウドストレージサービスが一般的になり、大量でのデータ(ビッグデータ)を研究者間で共有することが容易になってきました。さらには、様々なデータ科学的解析手法がライブラリとして容易に利用できるようになったことから、伊原・Manzhos研究室では、カーボンニュートラル社会への研究開発による駆動を目指し、化学を基礎とした、情報科学、コンピューティングの活用によるエネルギー変換技術の研究開発を、「エネルギー変換の化学と工学」として総合的に取り組んでいます。
伊原教授は、下記組織の代表および院長を務めており、これらの組織と連携して研究開発/教育をおこなっています。
★「エネルギー変換デバイスからシステム設計までを研究する!」 伊原・Manzhos研究室 ★
「エネルギー変換のサイエンスを研究する。そして、その知見がデバイスなどのテクノロジーに育てばもっとすばらしい。。。。」
デバイスの研究テーマは、電気化学デバイス(燃料電池/水電解セル、カーボン空気二次電池システム、、、)、次世代太陽電池(ペロブスカイト太陽電池、薄膜単結晶シリコン太陽電池、ポーラスシリコン太陽電池、、、)の開発に分類されます。高効率変換を目的とし、新規材料の開発、電極でのミクロな電気化学反応機構の解明、、、、そして、デバイスの作製と評価まで幅広く研究対象としています。電気化学、物理化学、固体化学、量子化学、化学工学、半導体物理、、、、といった、化学をベースに物理までを利用した研究を行っています。
「各エネルギーデバイスに使われている材料の特性、原理、特徴を学術的に把握し、スマートエネルギーシステムを開発する。」
電極反応機構や半導体結晶成長機構の追求、、、、そんな基礎的な研究を行っていても、その研究がデバイス性能に与えるであろう影響、そしてそのデバイスが持つエネルギーシステムの中での位置づけ、さらに、地球温暖化問題の中での位置づけ、これらをズームイン、ズームアウトの視点を、しっかりとした学術を基礎に把握しておくことが大切です。当研究室では、IoT技術、ネットワーク技術、を活用し、データ科学的手法(超高次元データの機械学習手法の開発、クラスタリング解析によるエネルギービッグデータ構造の解析、エネルギーマテリアルズインフォマティックス、ニューラルネットワークを活用した計算化学の高精度/高速化、変動型再生可能エネルギー電源の発電量予測、、、)を開発し、それらをオリジナルブランドであるインテリジェントエネルギーシステム”エネスワロー”として開発しています。
「なぜ、2つのエネルギー変換デバイス、そしてエネルギーシステムを研究するのか?」